試し読み
雪ノ藍 ついに待望の小説が 一冊の本になって発売されました!!
目 次
*小説・詩
恋は桜の蕾の如く 5
金色の誓い 19
月慕情 29
白詰草に想いを託して 53
遙かなる夢 99
*随筆
女の一生 大和撫子と出合って 103
ネコとの再会 151
自然界への憧憬 161
注釈 169
あとがき 170
主な参考文献 174
−内容一部抜粋−
「私、失恋をしてしまいましたの」
「えっ!?」
呼び出されてからしばらくの沈黙がおかれた後、そんな綾の大胆な発言に、おもわず基代は、驚愕の色を隠せなかった。
思い返せば、最近妙に元気がなく、溜息ばかりついたり。授業中、指されても、いつもならすんなりと答えられていた優等生ぶりが、発揮されないばかりか、問題さえもまともに聞いていない様子。放課後の時だって、友達同士でよく寄り道をする甘味処へ行くことも断って、独りで帰ってしまう―――と、基代の脳裏には、今迄心配していた出来事が、パズルのように一つに重なろうとしていた。
綾は、音楽室の窓枠に手を添えると、遠く外を眺めては、言葉を続けてきた。
「以前、お話ししたことを憶えていらして!?幼い頃から秘かに想いを寄せていた殿方。あのお方、ご婚約なさったの。幼馴染みだから、直接本人から告げられましたわ。来年早々、ご婚儀が執り行われるそうなの」
・・・・・etc